検索システムの2つの防衛ライン
Googleにとっては、検索連動広告に変わるビジネスモデルが確立するまで、検索システムにユーザーを留めておくことが重要です。その視点で「AIによる概要」と「AIモード」を見れば、2つの施策が2つの防衛ラインになっていると見ることができます。
最初の防衛ラインは、「AIによる概要」です。ユーザーが検索窓に単純な語彙検索をしたり、自然言語で質問をするなど、ランキングよりもAIでの回答が向いている場合は、「AIによる概要」が自動起動して、ユーザーの満足度を満たします。この場合は、検索ランキングも検索連動広告も表示して、検索の延長線上のサービスとして維持します。
第2の防衛ラインは「AIモード」です。ユーザーがAIチャットに聞きたいときは、起動時でも検索結果からの続きでもいつでも「AIモード」に入ることができます。この場合は、一時的に検索としてのランキングや広告も停止して、AIチャット専念することで、他のAIチャットへ離脱することを最優先に動作します。ユーザーはAIチャットを続けることも、検索に戻ることもできるので、高い利便性を得ることができます。
検索連動広告を維持するという視点とは別に、AIチャットが急速に普及しているとはいえ、様々なユーザーがいて、AIの使用頻度や移行スピードが異なります。ほぼ全てのインターネットユーザーがGoogle検索を使っていることを考えると、2つの機能の起動の仕方や振る舞いの違い、検索用のGeminiで検索結果との整合性が担保されていることなど、インターネットユーザーにAIの恩恵を普及させる非常に優れた方式と感心せざるを得ません。
ゼロクリック検索はサイトに必要な犠牲
SEO業界では、「AIによる概要」だけをユーザーが見て、サイトのリンクを押さずに去っていくゼロクリック検索が話題です。これにより、「AIによる概要」が表示された大部分の検索では、クリック率が大幅にダウンするという現象が発生しています。
検索ユーザーの大部分は、短くて分かり易い結果を望んでいます。「AIによる概要」では、回答が直接表示されて、効率的でストレスが少ないことも支持される理由と思われます。求める回答が単純であれば、ユーザーがサイト訪問しないことは極めて自然です。
Googleからすれば「AIによる概要」は、キーワード検索連動広告を維持するための防衛策です。ユーザーも「AIによる概要」を肯定的に受け入れています。「AIによる概要」には、まだ自然検索のランキングが表示され、トラフィックへの貢献は少ないとはいえ引用リンクも存在します。
もし、検索システムに「AIによる概要」や「AIモード」が存在しなければ、ユーザーはより急速にAIチャットへシフトして、サイトへのトラフィックはより急激に壊滅的な打撃を受けている可能性があります。その視点に立てば、サイトにとってゼロクリック検索による減少は必要な犠牲とも考えられます。
AIによる概要の向き不向き
「AIによる概要」は全ての検索に等しく有用なわけでなく、向き不向きがあります。コンテンツを制作する時にそれを考慮することは今後必要となるでしょう。今までもこれからもアルゴリズム同様、そのロジックは常に変化しますが、観測と仕組みから多少の推測は可能です。
向いているもの
- 「○○とは?」といった言葉の意味。歴史や科学的事実。
- 曖昧な漠然としたもの。
- 複雑な検索や長い質問で、複数の検索結果から導かれるもの
不向きなもの
- 製品やサービスを想起するもの。EC、取引に関するもの
- ローカル情報
AIは基本的には公開情報を元に回答するので、一般常識や事実に対する相性が高いので、「AIによる概要」の出現率も高く、ユーザーのゼロクリック率も高くなるでしょう。これまでの検索では対応できない領域の質問となる、「明日何したらいいかな?」のような曖昧な質問や、複数の情報を組み合わせが必要な複雑な質問に回答を作ることが得意です。これらの領域は総じて広告での重要度が低いか存在しなかった領域なので、「AIによる概要」を多く出現させる動機になります。
一方で、中立性を保とうとすることから、特定の製品や企業への言及は控えめであり、ECや取引、金融情報に関することにも積極的に表示されることは少ないでしょう。リアルタイムな状況を取り込むことも得意でないのでローカル検索では限定的になると思われます。また、これらの領域は広告が盛んな領域でもあるのでGoogleの戦略とも相まって、「AIによる概要」が表示されにくいと考えられます。